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大阪地方裁判所 昭和41年(行ク)1号 決定 1966年3月11日

申立人 北畑静子

被申立人 西成税務署長

訴訟代理人 樋口哲夫 外一名

主文

被申請人が申請人に対し、昭和四〇年七月一二日付物品税の決定並びに無申告加算税の賦課決定に基づく滞納処分として申請人所有の別紙目録記載の物件に対してなした差押処分は、大阪地方裁判所昭和四一年(行ウ)第六号物品税賦課処分取消請求事件の本案判決があるまでこれを停止する。

理由

(前略)

(当裁判所の判断)

申請人提出の疎明資料によると、被申請人が、昭和四〇年七月一二日付で申請人主張のような物品税の決定ならびに無申告加算税の賦課決定をなし、かつ、これが滞納されたとして、同年一〇月八日付で申請人所有の本件不動産につき差押えをなしたことが疎明せられるとともに、申請人が、昭和四一年一月一九日、右物品税の決定ならびに無申告加算税の賦課決定の取消し求める訴を適法に当裁判所に提起したことは記録上明らかなところであるけれども、申請人がその執行の停止を求めようとする処分である右差押え処分自体について取消しの訴えが提起されていないことは明白である。そうだとすると、右差押え処分については、行政事件訴訟法二五条二項にいわゆる処分の取消しの訴えの提起があつたものとはいえないかのように思われないではない。しかしながら、右物品税の決定および無申告加算税の賦課決定と本件差押処分とは同一行政庁の行う関連した一連の行政処分であつて、差押処分は物品税の決定ならびに無申告加算税の賦課決定を前提とし、これに後続してなされる行政処分にほかならないのであるから、前提処分たる右物品税の決定ならびに無申告加算税の賦課決定の取消しを求める訴えが適法に提起せられている以上、行政事件訴訟法二五条二項にいわゆる処分の取消しの訴えの提起があつたものとして、(他の要件が具備するかぎり)後続処分たる右差押処分の執行を停止することができると解するのが相当である。

そこで、本件差押処分の続行により申請人に生ずる回復の困難た損害を避けるために右処分の執行を停止すべき緊急の必要があるかどうかの点について検討するに、本件差押処分の目的たる物件が申請人らにおいて現に居住する建物とその敷地であつて、右滞納処分が続行せられると申請人らがその住居を失うにいたるおそれがあることは、本件疎明資料によつてこれを窺うに難くないから、右処分の続行によつて申請人は回復することの困難な損害を蒙ることとなり、かつこれを避けるため緊急の必要があるといわなければならない。

よつて、申請人の本件申請は理由ありと認めて主文のとおり決定する。

(裁判官 石崎甚八 藤原弘道 福井厚士)

目録<省略>

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